人の血 鬼の血 徒然編
□第21章 眠レヌ闇ノ花
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「罵娑羅党?」
「ああ。近頃かぶき町を中心に出没する過激派攘夷組だ」
煙草をくわえ障子のわきに立つ土方さんに答える近藤さん。
俺はみかんを口にほうり込みながらこたつに肘をつく。
「読みにくい漢字使いやがって絶対馬鹿ですぜィこいつら
とりあえず難しい漢字並べておけばなんかかっこよくなると思ってる田舎の不良並に馬鹿ですぜィ」
俺は隣に突っ伏した栗色の頭をみかんをとる手とは反対の手で撫でる。
先ほどから千鶴もいたのだが、こたつのあたたかさからかいつのまにか眠っていた。
本人は隠せているつもりかも知れないが、最近の千鶴はどうみても寝不足だ。11時くらいには俺や近藤さんたちにおやすみを言って部屋へ戻るのだが、あまり眠れていないようで朝はかなり辛そうだ。
…それでも寝坊せず、決まって俺より早く起きる姿をみているとあいつの自分に対しての鞭打ちの強さがよくわかる。
(おめぇはもっと自分の体いたわりなせェ、)
視線を落とすとすうすうと寝息をたてて部屋の暖かさからか頬を微かに染めた千鶴がいた。
「攘夷浪士なんざみんなそんなモンだろ。最も、田舎の不良っつー点は人のこと言えた義理じゃねーがよ」
「一緒にしないで下せェ俺ァちんけなヤンキーよりよっぽど気品に溢れてまさぁ」
「どこが」
呆れたように新たな煙草を取り出しライターを擦る土方さんに、俺は眉をひそめて「いい加減にしなせぇよあんた、千鶴寝てるんですぜ」と言うと、バツが悪そうにジッポをしまった。
「…よく眠ってんな、鬼城」
「…疲れてんだろぃ」
細い髪を梳いて指に絡める。
ゆっくりできてるのはこんなときくらいなんだろう。
いや、今さえも何も抱えず眠ることができていないのか。
どんなにはしゃいでいても千鶴が心から毎日を楽しんでいないことなど、沖田はとっくに見抜いていた。
――恐らく、土方も。
だからこそ彼は大人しく煙草を消したのだ。
「ハッハッハッ、総悟は千鶴ちゃんには優しいなぁ!」
「妙なこと言わねーで下さい近藤さん、俺はただ女子供の前でもなりふり構わず煙草吸う呆れたニコチン野郎を咎めただけでィ」
にこにこと笑う近藤さんに憮然と言い放つ。
そうなのか?なんて言いながら近藤さんは腕を組んだ。
「まぁ話がそれたが、とにかくその罵娑羅党の奴らが予告状をたたき付けてきた件だ。
場所は大江戸デパート。江戸でも特にイベント会場なんかが集中してる場所だ」
そこでテロを起こすつもりらしい。
本来なら営業を停止するべきだろうが、なんにしろ場所が場所だ。江戸のマーケティングの中枢と言ってもいいデパートだけあって週末は客も多い。
特に明日は複数のイベントが開催されるので、どうか真選組に警備をお願いしたいという話だそうだ。
「警備って簡単に言うがなァそんだけの人間が集まるからこそ浪士が見逃すわけねーんだろ。
イベントもろともやめにすんのが最善策じゃねーのか」
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