人の血 鬼の血 徒然編
□第22章 甘味ノ幻想儚シ
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「銀ちゃあん待ってヨ!」
「あん?ちんたらしてっとはぐれるぞ」
「銀さん何急いでんですか柄にもない」
「急いでねェよ!てめぇらがたらふく食えるように大人な銀サンが案じてやってンだろ!」
「何が大人アルか朝から浮かれて机に足の指ぶつけてた奴に言われなくないネ
気持ちわりーんだヨ糞天パ」
「神楽ちゃーん!何でそういうこと言うの?ねェ!せっかくたまにはいい思いさせてやろうと思ったのに!」
「まぁまぁ二人共、せっかく出かけてきたんだから仲良くやりましょうよ」
朝の大通りを歩く万事屋の声が響き渡る。
右腕を着物の懐下に突っ込む銀時に神楽が巻き付く。
新八も駆け寄り、3人のお馴染みの姿は一角のデパートに消えていった。
「うおおおすげーアルかっけーアル!
見て見て銀ちゃん!」
「オイあんまはしゃぐんじゃねーよ庶民感滲み出るだろ」
「銀さんこれ!大理石ですよ!」
はあ、とため息をつくも前ではしゃぐ二人にどこか優しい眼差しを向ける銀時。
二人の背中を押して橙の明かりが無数に灯るエレベーターの中に押し込むと、2階のボタンを連打するのだった。
「あっ、すみませーん入れて下さーい!」
閉まるボタンを押そうとしたときそんな声と複数の足音が聞こえて慌ててドアをおさえた。
「どうぞー」
「すみませーん、ありがとうございま……」
両者の動きが止まった。
紫の着物の少女に、黒い男が3人。
万事屋は目を剥いた。
しっ………
「真選組ぃぃいぃい!」
「ぎっ銀ちゃん!」
「げっ!万事屋!!!」
最悪なことにエレベーターという密室空間で鉢合わせした両者は興奮と苛立ちを抑えられなかった。
「おいぱっつあん閉まるボタン押すアル!早くするヨロシ!」
「え、ええ!?」
「させるかァァ」
土方さんが強引に入る。押された千鶴が新八の胸にダイブした。
「うわっ」
「ちょっ……千鶴さんんんんん!?」
鼻血を出しそうな勢いで真っ赤になる新八に沖田が眉をひそめた。
「おい…何赤くなってんだ童貞が」
「ちょっと待てェェェ今さらりと何言った!関係ねーだろ!」
「これだから女に免疫のないメガネはすぐに引かれて新八になるネ」
「女に免疫のないメガネって何だよ!新八になるってそれほとんど僕の話しかしてねーだろ!」
「ぎゃーぎゃーうっせーよガキ共!」
7人を乗せたエレベーターはガタガタと揺られながら上昇した。
――それを射るように見つめる目には、流石の彼等も気がつかなかったのだけれど――――
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