人の血 鬼の血 徒然編

□第24章 逃ゲナイ少女ト瓦解ノ覚悟
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「この小娘!」

突然後ろから近づいた気配に身をかわそうとするともうひとつ、影。

ジャキンッ

切り裂くような痛みが背中大きくに走った。

ひとつ遅れて、吹き上がる血飛沫。

ぐっと堪えて目の前の自分を斬った男に刀を振った。

刃と刃がかちあう。


「逃げて!みんな逃げて!

どのみち無事で済む道はないの、わかるでしょ!」


刀を弾く。

と、次の瞬間だった。

背後からがっちりと組まれ動きが止まる。
しまった、思ったときにはもう遅く。

目の前の男が腕を大きく振り上げるとその影が照明を遮った。

ぐっと気を決めると




予想外な音がした。


ズガガガガガ。
チュウンと弾丸が掠める。
驚く暇もなく赤い影が目に入り、足元を銃撃された男は次の瞬間赤いそれに薙ぎ倒された。

ずさあっと男が転がる。


あたしは信じられない思いでその攻撃の主を見つめる。

弾丸がめりこんだあちこちから煙り。
その揺れる風の中、出で立つのは――



「かっ…神楽ちゃん!」
「千鶴を離すヨロシ」

なんで、なんで!

「やめて神楽ちゃん!もういいの!」

わけがわからなくなって、あたしは狂ったように叫んだ。

ただをこねる子供のように、ただ。

「逃げて!捨てて!あたしを捨ててって!今すぐ…」

「逃げないネ!」

響き渡った甲高い声。

傘の柄をぎゅうっと握りしめた神楽が、目をつぶって振り絞るように叫ぶ。


「逃げないネ!
夜兎の血からも、自分戦いからも護るべきものからも!

本当の自分からも!
わたしは、
わたしは絶対逃げたりしないネ!」

"逃げない"。

少女の固い誓いが、私の心を突き刺した。

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