短篇集

□地上の七夕
2ページ/3ページ







「ったく…ガキじゃあるめーし
なんでこんな…」

「いいじゃねェですか土方さん。たまには」

「そーそー総悟の言うとおり!はいこれ二人の短冊!!」


2枚の札を押し付け、あたしは次の隊士のところへ向かう。

辺りはもう大分薄暗くなっていた。

涼やかな虫の音が心地よい。


「はい!これ」

「ありがとう桜子ちゃん」


ふーう、これでひとまず配り終えたかな。
あたしも早く書かなくちゃ。

残った短冊の前で筆をくるくる回してみる。


「え〜っと…」


これと、これと、これと…

なんて考えているうちに収拾がつかなくなってきてしまった。

ふうと息をつくと不意に、背後から。


「おい桜子」

「あ、総悟、かけた?」


総悟が話しかけてきた。


「なんでィそれ」
「何って、短冊」

「いや…書きすぎだろ」


だって、1つに決められないんだもん。

口を尖らせそう言うあたしに総悟は勝手に短冊の山をあさり始めた。


「『剣がうまくなりたい』

『お金たまりますように』

この辺はまだいいとしまさァ

『Owee欲しい』ってお前これ完全に別の行事になってんだろ」

「だって結局発売中止になっちゃったじゃん!」


あたしの短冊を物色する総悟。

…まぁ、それ全部おふざけなんだけどね。


あたしの、本当のお願い事は別にあることは誰も知らない。

息をついて天を仰いだ。

いつのまにやら空は真っ黒になっていて、光の粒が一面に輝いている。

高くのびた笹の葉は天にとどきそうだ。
しゃらりしゃらりと夜空に踊る。


「きれー…」


ふと隣の総悟をみた。こちらもまた綺麗な顔。


はぁー…かっこいい。


ふと思った自分に少しひいてしまう。なにを考えているんだ、あたしは。

ああ、でも今日くらいいいよね、好きな人の隣占領しても。


さわやかな夜風が あたし達をつつんだ。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ