短篇集

□愛をのせて 願い星
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隊長が にやっと笑った。

「じゃーーん」

かけ声とともに隊長は自分の体をどける。


その向こうにあったのは…見たこともないような、宇宙そのものみたいな星空だった。


「…き……れー…」




声が掠れる。目は開いたまま、体を動かすことができなかった。


どこまでもどこまでも幾千の輝きがつづいていて。

麗しい夜空に、星もあたしも吸い込まれている感覚に陥る。


「綺麗、隊長……」

「どこ見ても星だろ」
「うん」

宇宙に、漂ってるみたいだ。
手をのばしても届かないけど…。

「流れ星、きそう」
「くるだろ。ずっとみてりゃ」

「まじか!じゃあ準備しなきゃ!」


何を願うんですかィ、と聞かれる。



「金金金!って」

「……いっぺん死んでみるか」

「ひどっ!いやあたしも悪いけど、ひど!」

今月もピンチなんだよ。ダメかなァ


「そんな不純な願いは叶いやせん」
「えーじゃあ…」

「『沖田総悟の嫁』にしときなせェ」

「無理。長い。」

「別に3回言わなくてもいいだろィ」


「言いたいの。やっぱり2文字くらいでなきゃ」


そうは言っても、なかなか3回も唱えられそうな言葉なんて思いつかない。

うーんとうなる私のよこで、隊長は「副長の座」を早口言葉のように繰り返していた。

練習…してるのかな、なんかあたしこのごろ土方さんがかわいそう…

ご愁傷様です、ホント。


「あ!今言えやした、3回」

「もういっそ土方さんを頭に想い浮かべた状態で死ね死ね死ね、とか」
「おい、お前が一番ひでえぞ」
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