短篇集

□ふわり
2ページ/4ページ




「いらっしゃいませ〜」
「何もいらしてねーよ」

「今日はどんな髪型にしますかー」

「ストレートパーマで」


面倒くさそうに答える銀ちゃんにむっとしつつ、あたしはハサミを手にとる。

ジャキン、といい音がした。

「あんま無茶すんなよ」
「わーってるって!」


じゃ、さっそく行きます。刃でふわふわした毛を挟む。

ゆっくりとハサミを握った。

ジャキンとおとをたてて髪をはさむと、銀髪がはらりと床に散る。


「おぉ……」
「どーだ?」

「いいかんじ…かな」


感動…。

調子が上がったあたしはジャキン、ジャキン とリズミカルにハサミを入れていった。


「おい、あんま無茶すんなって」

「へーきへーき!」


あたしって美容師向いてるんじゃないの?
調子乗ったことを考えつつ、一生懸命ハサミを入れていく。

こうしてみると、けっこう伸びてたんだな。


夢中で切りこんでいった、次の瞬間だった。



ジョキッ……



「………え?」


ぼと、と音がして私は足元をじっと見つめた。


「おい桜子、今なんか妙な音したけど…大丈夫なんだろーな?」


「だ、大丈夫っ」



大丈夫じゃない。

全然大丈夫じゃない。

まったいらに切れた束を見て、あたしは背筋がぞーっと寒くなるのを感じた。

どーしよ…切りすぎちゃった…



「おい、桜子?」

「大丈夫大丈夫!」



そう、まだなんとかなる!!

左が短くなったから、右をもう少し切り落として…
アンバランスになるから下の方も少し切ろう。


大丈夫、これくらいは修正可能!
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ