短篇集

□はじまりは君と
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俯き加減のあたしをしばらく見つめてから、土方さんは成る程というふうに口角を上げた。


「ほぉ〜今年は心機一転、女でも目指してんのか?」


いやいや、目指してるっていうかわたし一応生まれた時から女なんですけど…

思わずつっこみそうになるもなんとか飲み込み、ぎっと睨みつける。


「あー悪ィ悪ィ、んな睨むなって。
総悟のことだからその辺ぶらぶらしてんだろ、多分。

いつまでもそのだんまり決め込まれてちゃ面倒だからさっさと探してこい。」



言われなくても探しますよーだ!

べっと舌をだして、土方さんの横をすり抜けていった。








「はぁ〜どこいったんだろう?」


食堂にも風呂場にもいなかった。

思い付く場所が他になくて途方にくれる。

寒い廊下でうろうろしてると、声をかけられた。


「あれ、桜子ちゃん?」


あ……ザキだ…。
張り切って黒い袴なんて履いちゃって、にあってはいるけど年が明けても相変わらずぱっとしない男である。

「ちょっと今、失礼なこと考えてたでしょ」


あれれ、なんで分かるんだ?

心の覗きだなんてけっこうな変態野郎だ。



「もうモロ顔に出てるから。直した方がいいよほんと

桜子ちゃんこの前副長に叱られてる真っ最中にプリン食べ忘れたとか究極に関係ないこと考えてたでしょ」


図星をつかれて思わずうなりそうになった。
本当にこの人、ある意味尊敬する。

すごいなぁ…さすがは、監察スキルの賜物なのかしら?



「で、喋らないのは大方沖田隊長と初会話しようとか考えてるから?」


なんかここまで読まれるともう怖いな。

今までナメてたけど、意外と頭の回転速いのかもしれない。

ザキはにっこり笑うとこう言った。



「なら早く会いに行きなよ、こんなとこにいないでさ」


あたしは首を振った。

残念ながら、それが出来ない。

ザキはあたしの仕種と表情から、なにかを読み取ったらしい。

気遣うような顔を見せる。


「隊長、いないの?」



こくんと頷く。


「どこいったんだ、あのお人は…

にしても隊長が元旦に桜子ちゃんを置いていなくなるなんて考えられなんだけど。

なんか言ってなかった?」


ううん、何も。首を振る。

昨晩も大晦日の特番とか紅白歌合戦とか見て…あたしが眠くなっちゃったから、総悟が部屋まで運んでくれたんだ。


「そっかぁ…

あ、局長なら知ってるかもよ、聞きに行けば?」


うん、と頷いてザキに手を振った。
別れて廊下を歩き出す。


実は、近藤さんのところへはもうとっくに行った。

局長でさえ総悟がどこへ行ったのか知らなかったんだ。
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