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クローゼの支援の導力魔法を受けると、なんだか体が軽くなったような気になった。



『ラルト!この竜は治癒能力はあるのか?』

「ああ。切りつけても問題はない」

『そうか、ありがとう』



それを聞いて安心した。少しだけ、彼には踏ん張ってもらおうと思い、4本の足に次々と切り傷を与えていった。さすがに硬いので、力もより加わる。







後ろ足まで切りつけて背後に回った瞬間、竜は唸り声を上げて翼や尻尾をばたばたさせる。その時にレインは尻尾が思い切りあたり、体が浮くのを感じた。そしてなんとか着地した場所は、今暴れている竜の頭と同じぐらいの高さの場所だった。




『………あ。アガットさん!』

「!……そうか!」


アガットは自分達よりも数メートル上にいるレインを見て案が浮かんだ。


「レイン!雷を落とせるか!」

『!!…は、はい!』

「それで竜の隙を作れ!エステル、姫さん!一瞬でいい、動きを止めろ!」

「ええっ!?」



躊躇するエステルだけど、アガットはそのまま走って飛んでレインの元へと向かって行った。その少しの間、レインは武器をしまって雷の力を溜める。


そしてエステルとクローゼは察したのか、攻撃を当てにいく。






『アガットさん、いきます…!』

「!…ああ!頼む!」



レインは体の回りにはバチバチと稲妻が流れているのが見えて、アガットは少し驚いた。だけど、恐怖を感じることはなかった。

そしてタンッ、と竜の上まで飛び、溜めた雷を落とす。


『エステル!クローゼ!離れろ!』

「!」

「はいっ!」



雷を受けた竜は、二人の攻撃のせいもあってかすぐに倒れ、レインも無事地面に着陸できた。そしてアガットは胸に提げてあるペンダントを数秒間握ったあと、剣を力強く握って落下速度の勢いで《ゴスペル》を壊しにかかった。


パキーン、と音が聞こえ、エステルとクローゼは笑顔になる。どうやら《ゴスペル》を壊したようだ。

そして竜の前で膝をつくアガットに駆け寄った。



『アガットさん!大丈夫ですか!?』

「ああ…大丈夫だ」

『ふう……やりましたね』

「へっ、どうやら…上手くいったみてえだな」

「うんうん、大成功よ!」

「アガットさん…凄いです!それにレインさんの魔法も凄かったです!」

『い、いや、そんな……』

「…竜も何とか倒せたし、一件落着といった所か」



自分の力を頼ったり褒められたりするのは、なんだか妙な気分だ。顔がほんの少しだけ熱い。

するといつのまにかラルトは竜の目の前に座っていた。




「解放されて良かったな。レグナートよ」

「……見事だ……」

『ラルト……竜とも会話ができるの?』

「お前達もできるぞ」

「え、今の声ってもしかして…」

「見事だ……人の子たちよ」



竜の意識は元に戻ったのか、戦う気は全くなく、ちゃんと足をついて立っている。エステル達は会話が出来ることについて驚いていたけど、レインはラルトとも会話が出来るので、特に驚くことはなかった。


彼の名は《レグナート》。この地に眠る竜の眷族。

彼も、ラルトと同じで発声器官は持っておらず、念話という形で会話ができる。ラルトの場合は、聖痕を持っている者のみだが、何故か彼とは会話ができる。




「よくぞこの身を戒めから解き放ってくれた。礼を言わせてもらうぞ」

「ふん、礼はいい。俺たちがここまで来たのはてめぇを解放するためじゃねえ。これ以上の被害を防ぐためだ」

「私が被害を与えてしまった街や村のことだな……意志を奪われていたとはいえ、確かに私にも責任があるだろう。さて……どう償ったものか」

「全く。この男は相変わらず口が悪い」

『(もう、ラルト…)』



誠意を見せれば許してもらえるかもしれないというエステルの案に、レグナートは少し考えた。



「……このような物で伝わるか自信はないのだが…人の子よ、もう少しこちらに近づいてはもらえまいか?」



そう言われて、レインは何も言わずに先に前に進むので、アガット達も疑問の表情を浮かべてレグナートに近づいた。

すると竜の元からキラキラと輝くものが落ちてきたのでアガットとエステルはそれを受け取った。




「これって……七耀石の結晶!?」

「金色の輝き……空の力を秘めた金耀石の結晶ですね」

『へえ…綺麗だな』

「私が付けた爪痕の償いだ。どうか、おぬしらの手から街と村の長に渡してもらえぬか?」

「――駄目だな」

『アガットさん…?』

「ふむ、やはり物では誠意は伝わらぬということか?」

「そういう意味じゃねえ。この大きさだと……1つ、1千万ミラといったところか。1万分の1でいい。これと同じ結晶を寄越しな」

「へ…?」

「犯罪でも絡まない限り、遊撃士を雇うのは有料でな。品物の運搬料だったら1000ミラ貰えりゃ充分だ。それさえ払えば引き受けてやるよ」

『ふう……』



《ゴスペル》のせいで操られた竜を傷つけたり雷を落としたりするのには抵抗があったので、これ以上いじめるつもりなのかと薄々思ってしまったけど、違ったようなので安心した。

そして運搬料の七耀石を受け取る。





「…しかし、先ほどの一撃は中々だったぞ。銀の剣士と戦っていた時は何とも頼りなかったが……一皮剥けたようではないか」



どうやら、操られてはいたけど意識は残っていたようだ。なので廃坑でのことは覚えているのだと。



   
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