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町の中を歩き回るだけでなく、お店の中に入ったりして臙脂色の髪の人物を探してみる。ついでにあのとき、学園祭のときに見た銀髪の男も。



何故か心当たりがあるような気がしてならないけど、彼のことはわからない。学園祭のときにみた臙脂色の髪も、ライチだと確定はできないけど、もしあれがライチだったとしてももうルーアンにはいないような気がした。





飲食店に入り店内を見渡すと、女の子の店員が声を掛けてきた。




「お一人様ですか?」

『あ、えっと……ちょっと聞きたいことがあるんですけどいいですか?』

「はい。なんでしょう?」

『最近、この辺で臙脂色の髪の男性を見ませんでしたか?』

「臙脂色……あ、もしかしてあの人かしら……」

『!み、見たんですか?その人を』

「え、ええ。数日前、お店の前を掃除していて、その人が歩いているのを見ました。なんだかタイプだったのでつい見とれて…」

『あ、あはは……』

「はっ、…じゃなくて!その人、女の子と一緒に歩いてました。とても可愛らしい子でしたよ」

『女の子?』

「ええ。私、最近この街に来たばかりだから二人のことはよくわからないけど、それからその人のことは見てません」

『そう、ですか……ありがとうございます』



その男がライチだという確証はないけれど、ちゃんとした目撃情報を聞けて少し安心した。少しだけど、この国にいる可能性が上がった気がした。




『…せっかくなので、何か食べていってもいいですか?』

「はい、是非!あちらの席へどうぞ」



情報提供をしてくれたし、お腹もすいたことなので、軽く食事をしてからギルドへと向かった。


キリカはギルドで待機してても問題ないと言っていたので、そのお言葉に甘えてギルドを自由に出入りすることにしようと考えていた。










『(可愛らしい女の子と一緒に……)』

「レインちゃーん!」

『ん……?』




ギルドに入ろうとしたら、エステル達が丁度こちらに向かってくるので、軽く手を振った。



「どう?町は一通り回った?」

『はい。丁度ギルドに戻るとこでした』

「?どうかしましたか?」

『い、いや、なんでもない』


臙脂色の男と一緒に歩いていた可愛らしい女の子。というのを聞いて、ぼんやりとティータのことを見つめていたようだ。




『…エステルちゃん達は、ギルドに用事が?』

「あ、実はね……」



この町の近くにあるエルモ村の温泉を汲み上げる導力ポンプが故障してしまったらしく、博士の代わりにティータが行くことになったそうだ。街道には魔獣も出るとのことなので、エステルとヨシュアも着いていくことに。





「良かったらあたし達と一緒に行かない?」

「そーですよ。レインさんがよければ一緒に…」

『……そうだな。その、皆が良ければ…』

「ふふ、じゃあ決まりだね」

「………」

『?』



ティータはレインのことをまじまじと見つめるので、何かと思い首を傾げた。






「あ、あのあの、村に行く前に洋服屋さんに寄ってもいいすか?」

「いいけど、何か買うの?」

「えと、わたし、レインさんの服を買いたいです!」

『えっ』

「ふむ……ねるほどねえ」

「…い、今の服装は可愛いというより格好いいなので……」



ティータとエステルはレインの格好をまじまじと見つめるので、レインは少々困った表情でヨシュアに助けを求めるような視線を送った。




「ふ、二人共……レインちゃんが困ってるだろ…」

「でも、レインちゃんの服はあたしよりも女の子っぽくないのよねえ、お洒落だけど」

「そうなんです。レインさん可愛いのに、もったいないです」

『わ、私は服なんて、別に……』

「よし、ティータちゃん!レインちゃんを服屋に連れて行くわよ!」

「はい!」

『えっ…!』

「(ごめん、レインちゃん)」



ティータとエステルはレインを挟んで腕を取って歩き出すので、逃げることができなかった。ヨシュアに視線を送るけど、ごめんと言わんばかりに目を逸らすので、もう駄目だと思い大人しく服屋へと足を運んだ。












『わ、わかった、諦めます……。でも、色は暗いのが好きなのでそれで…』

「えー……でもまあ、あたしとティータちゃんにまかせなさいな」

「えへへ、ちょっと待ってくださいねー」

『………』



服屋はその名の通り、色々な服が置いてある。お洒落とかそういったことには疎いので、正直戸惑う。


そして渡されたのは、ティータと同じようなショートパンツとタイツ。上は袖なしのシャツに、同じく袖なしの軽い羽織るもの。そして二の腕あたりまである薄いアームウォーム。

明るめの色ではなく、かつ可愛らしい服だといって、試着室に連れていかれる。



『……はぁ』


どうしてこんなことに。そう思いながら、レインは仕方なく二人に渡された服に着替えた。だけど今は寝巻き以外の服は一着しかないので、ある分には問題ないのだが。


そして着替え終わってカーテンをあけて、その姿を3人に見せた。



「!レインさん、とっても可愛いです…!」

「うん、似合ってると思うよ」

『…動きやすいけど……や、やっぱり私には……』

「ふっふふー…あとはこの帽子をかぶって…」

『わっ』

「わあ!わたしとお揃いの帽子!」

『……さすがにこれは幼く見えてしまうんじゃ…』

「幼き者には幼き物を!可愛いんだからとやかく言わないのー!」

『………』



ティータとエステルはとても楽しそうだったので、断るわけにもいかず、そのまま皆で割って服を購入した。されるがままに流され、前に来ていた服をカバンに詰めて新しい服を身に纏いやっと町を出ることになった。





『…あの……』

「ん?」

『服…ありがとう、ございます』

「あはは、いーのよ!なんだか楽しかったし!」

『……』



確かに、ああいうのは滅多に経験することはなかったので楽しかったかもしれない。柔らかく微笑むと、3人も微笑み返してくれた。




そして人数も増えたことで、ティータはなんだか嬉しそうだった。

街道は魔獣がいるけど、そんなに襲ってくるようなものはいなかったので良かった。いたとしても、エステルとヨシュアが撃退してくれる。




     
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