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到着した場所はルーアンの街。外はもうオレンジ色の夕日が沈むころなので、今夜は街のホテルに泊まることにする。ラルトもこの辺りの地形は知っているようだったので、明日、街道で落ち合うことにしてそれぞれ足を動かした。
ここのホテルは前にアガットと共に泊まったこともあった。偽名を使うときは少し緊張したし、他の知り合いに会ってしまうのではないかとも思ったけど、今のところ誰にも会っていないので安心した。
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次の日、身支度を整えて早速ルーアンを後にした。ラルトと合流して、先ずはマノリア村を目指す。
初めてこの道を通ったのはアガットと一緒のときだった。海が珍しくて、だけど砂浜を歩くときはなるべく近づかないようにしていたのは、研究所の水場の件のせいで体が勝手に反応していたからだと今になって思う。
マノリア村に行く前の道の分岐点で、マーシア孤児院の標識を目にする。
まだ孤児院には行ったことがないので気になるところだけど、今はそこに寄るつもりはない。
エステル達、アガット達はどうしているかなんて、何故そんなことが頭を過ぎるのだろう。もう自分には関係ないのに。関係ない。
ヨシュアも、こんな気持ちなのだろうか。彼の過去も去った理由もわからないけれど。ただ、結社の、ライチのことは知っていたようなので関係者なのでは、とも思う。
頭を左右に振り、早くクローネ峠に行こうと思い力を使って建物の上や木を伝って行く。
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「……もう、関係ないのではなかったのか?」
『関係ない。けど……自分でもわからない』
クローネ峠のとある場所。一番最初に、アガットと出会った場所。ちなみに関所は中を通らず外の塀や崖を通りこして来た。
「レイン…あのケビンという男のおかげで精神が治ったものの……そこまでしてライチを見つけたいのか」
『……うん。ライチは私の家族だから…。ラルト。私、ラルトもそうだって勝手に思ってる。だってずっと一緒だったから…私がザビアークとして動いてたときも、帰ったらラルトが居て……。たまに居ないときもあったけどね』
「……………」
『…ミハルトの行方がわからないから、一刻も早くライチを……って、ラルト…?』
ラルトは何か察知したのか、急に走り出してしまうので後を追った。こちらの方面は行ったことがなかったので見失わないように走る。
着いた先はラヴェンヌ村という所。一体何があったのか、村の果樹園が滅茶苦茶に荒らされていた。村人達が騒いでいるので、先ほどこんな目に遭ったのかと思われる。
だけどラルトは走るのを止めないので、レインは急いでそれを追う。
『ラルト!どうしたの…!?』
「この中に、ある気配を感じる」
『気配…?……微かに風を感じはするが…』
山道を通ってラヴェンヌ廃坑の入り口に着く。何かの気配を感じるらしいが、入り口には入らず崖の上を登ってさらに上へと行ってしまうので、レインも登っていった。
しばらく進むと巨大な穴が見えてラルトがそこをそっと覗いていたので、レインはうつ伏せになってそっと下を覗いた。
『りゅ、竜…?』
「何故こんな場所に……それに…」
『!…あれは……』
下を覗くとそこには大きな竜が。そして、その露天の場所には人間が2人いた。
『レーヴェと…アガット、さん……?どうして…』
よく見ると二人は剣を交えていて、アガットは苦戦しているようだった。
「俺が剣を振るうのは、人を捨て修羅となるがため…しかしお前は、己の空虚を充たすがために振るっている」
「………」
「重き鉄塊を振るうことで哀しき空虚を激情で充たす……怒りで心を震わす間は哀しさから逃れられるからだ。だが、それは欺瞞にすぎない」
「……やめろ………」
『………』
「そして欺瞞を持つ者が前に進むことはありえない。《理》に至ることはおろか、《修羅》に堕ちることもない。今のままでは……お前はどこまでも半端なだけだ」
「黙りやがれえええ!!」
アガットは剣を振るうけど、中々攻撃は当たらず、レーヴェの攻撃を防ぐことに手一杯な状況になった。
「無様だな……せめてもの情けだ。そろそろ終わらせてやる」
『!』
そしてアガットの剣が折られ、倒れてしまう。
「…行くのか」
『ラルト、手出しは無用だ』
「ふ、関係ないのではなかったのか?」
『……万が一私が怪我をしても、間に入るなよ』
「……あの竜は、操られているようだ。用心しろ」
関係ないとは言ってても、心の中ではそうは思っていない、というのをあまり認めたくはなかった。でも行かないわけにもいかない。
レインは立ち上がって双剣を抜き、露天の場へ落ちていった。