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霧降り峡谷は文字通り、入り口から霧がかかっていた。奥に入れば完全に先が真っ白になることが予想される。
『あっ、ラルト…!』
霧の中からラルトが出てきた。丁度良いタイミングだというと、自分達の気配がしたから来ただけだと言うのでレインは小さく笑った。
「その子がラルトね。金色と白かあ…綺麗ねえ!あたし、エステル。よろしくね」
「本当…珍しいですね。私はクローゼです。よろしくお願いします」
「ウォン…(ああ。以後お見知りおきを)」
エステルとクローゼは屈んでラルトに挨拶をする。エステルは普通に触るけど、ラルトは大人しい。そんな態度に好感を持ったのか、なんだか穏やかな空気が流れる。
「ったく、和んでる場合か…おい狼。竜の場所は突き止めたのか?」
「…全く。礼儀を知らん男だ」
『こ、こらラルト…』
「なんだ、またなんか言いやがったのか?」
『い、いえ、なんでもないです。ラルト、居場所は分かった?』
「ああ。我に着いてくるといい」
『ありがとうラルト。……居場所が分かったから、着いて行こう』
「へっ、さすがだな」
「じゃあ、近くになったらジークに伝えてもらいましょ」
「そうですね」
そして、霧降り峡谷の中に入っていく。
奥に行くにつれて霧が深くなっていくので、足元には気をつけた。
しばらく歩いて橋を渡ると、アガットは不思議そうな顔をした。
「こっちの道は初めてだな」
「あたしもこっちの方までは行ったことなかったわ」
『ラルトが偵察しに行ってくれて助かったな……』
先へ進むと洞窟への入り口が出てきた。ラルトによると、この先にはここよりも危険な魔獣が徘徊しているとのこと。だけどそれを越えると竜がいるのだと。
「へッ、どうやら気合いを入れる必要がありそうだな」
「あ、待ってください。そろそろ《アルセイユ》に連絡した方がいいと思います」
「そっか。それがあったわね」
クローゼは現状と場所についてのメモをして、ジークを呼び出して彼の足につけて《アルセイユ》に向かわせた。
ラルトもすごいと思うけど、ジークもすごいと思う。
そして気合いを入れて、洞窟の中に入っていくのだった。
洞窟の中は霧がないので進み易いし戦いやすい。
「ふう……なんか、レインの剣術って独特よね」
『えっ…そ、そうかな…変、かな?』
「ううん、全然変じゃないわ。剣を持ち替えるのが速いし、動きもとっても身軽だし。まるでサーカスの芸を見てるみたい」
『エステル…そんなに私のこと見てたのか』
「うん。って、べ、別に変な意味とかじゃなくてね!」
『(変な意味?)私も見るぞ。エステルのこと』
「ええっ?」
武器をしまってエステルに微笑みかけると、エステルは若干焦りの混じった声を上げた。
『私には真似できないからな…エステルの棒術』
「(ああ、そっちね…って、何考えてんだか)えへへ、そう?」
「ったく、何勝手に焦ってんだよ」
「別に焦ってないわよ…(レインと話すと調子狂うときもあれば和むときもあるのよね)」
「(俺はいつも調子が狂う)」
「ふふ……」
緊張感に欠ける中、やっと洞窟の奥についた。竜の姿を見ると一気に4人の気が変わり、慎重に歩いていく。どうやら竜は眠っているようだ。それに、自分達以外の人の気配は感じられない。
「(これはチャンスかも……アガット、どうする?)」
「(まずは俺一人で接近する。うまくいきゃあ、そのまま《ゴスペル》を破壊できるだろう)」
「(そっか…分かった)」
『(アガットさん…気をつけてください)』
「(ああ。心配すんな。失敗したときは援護を頼むぞ)」
『(はい)』
「(気をつけてね…!)」
アガットは一人で近づき、途中の岩に身を隠し、そこであのユニットを起動させた。レイン達はいつでも出て大丈夫なように武器を構える。
「らあああっ!」
そして気合いの声と共に刃を《ゴスペル》に当てるが、どうやら浅かったらしく、失敗してしまった。竜は起き上がり、火を吹くのでレインは先行してアガットの側に寄った。
『アガットさん!』
「アガット!」
「ヒビは入ったが破壊までは出来なかった!こうなりゃもう一度チャンスを作るしかねえ!手を貸してくれ!」
「もちろん!」
『了解です』
「……行きます!」
まさかこの巨大な竜と戦うことになるなんて。予想はしていたけど、改めて見ると本当に大きい。操られてるとはいえ仕方がない。