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エステルはなんとか抜け出して、何故か潜入していたヨシュアと合流して共にこの艦から抜け出そうとしていた。その前にレインを助け出さねばと、二人は監禁室へと向かった。
階段を下りると、房の前には血痕が落ちていて、二人はまさかと思い足を速めた。血痕は中に続いていて、中を覗くとそこには血を流して倒れているレインの姿が。側には取り外された武器が置かれている。
「レイン!!!!」
「待って!今開くから!」
慣れた手つきで装置を操作すると、バリアが解除されてエステルはすぐさまレインの側に駆け寄った。血と涙で汚れた姿を見て、エステルは両膝をついて顔を青くした。
「嘘…どうして、レインが…こんな……」
「レイン、レイン!」
『………』
「誰がこんな…!レインが…こんな風に、なるなんて……っ」
エステルは力なく倒れるレインの上半身を上げてぎゅっと抱きしめた。
「………エステル!今はレインも連れて逃げなきゃいけない。僕が背負うから、エステルはレインの装備を持って」
「う、うん……」
今にも泣きそうなエステルをなんとか動かしてレインの武器を持たせ、ヨシュアはレインを背負い、この場から走り去る。
「息はしてるから大丈夫。死んじゃいないんだ!だからこれからすることに集中するんだ」
「うん…わかった…!」
とにかく今は脱出せねば。ヨシュアが確保した脱出用の飛行艇を目指してひたすら走った。
格納庫の奥まで行き、飛行艇を確認したところで、ヨシュアは足を止めるのでエステルも足を止めた。
「うふふ……遅かったじゃないか」
「!」
「あ、あんた…!」
「……カンパネルラか。」
「まぁ、その子を助けに行ってたなら仕方ないか」
ヨシュア達がここに来るのがわかっていたかのように現れたカンパネルラ。彼の言葉を聞いたエステルは眉間に皺を寄せた。
「まさか、あんたがレインをこんな風に!?」
「心外だなあ、僕はそんなことしないよ。それよりも、つれないなぁヨシュア。レーヴェとだけ話して僕には何の挨拶も無しかい?」
「キミが船に残っているとは思わなかったからね……僕の動きを読んでいたのか?」
「あはは、僕はこれでも『計画』の見届け役だからね。他の連中よりも色々と気付くことが多いだけさ」
「……………」
「ふふ、それにしても……5年ぶりに会ったら君も随分変わったねぇ。なかなか男前になったじゃない?」
「そういう君は……全く変わっていないんだな。その外見のまま歳を取っていないみたいだ」
「うふふ、お肌の手入れは毎日欠かしていないからねぇ。君もよく女装するらしいし、いい化粧品を紹介しようか?」
「…………………」
「あーもう、じれったいわね。ここで待ってたってことは、あたし達と戦うつもりでしょ!?さっさと構えなさいよ!こっちには怪我人がいるんだから!」
「あはは、威勢のいい女の子だな。ヨシュアの彼女っていうからどんな子かと思ってたけど……なかなかお似合いなんじゃない?」
「か、彼女って……」
「おっと、彼女というのは空賊の女の子の方なのかな?モテモテだね、ヨシュアきゅん」
「……………」
「……戯言はそのくらいにして欲しいな。どうしてジョゼットのことまで知っているのか知らないけど…君の戦闘力は僕と同じくらいのはずだ。それでもやりあうつもりかい?」
「あはは、そんなつもりはないよ。さっきも言ったように、僕は『計画』の見届け役でね。積極的に君たちを捕まえる義務はないんだ」
「……………」
「ふーん、そうなんだ。だったらどうしてこんな所で待ってたわけ?」
「うふふ、そりゃあ勿論、君たちに挨拶をするためさ。本当は君たちの脱出劇を少しばかり盛り上げてあげようと思ったんだけどね、その子に免じて、今回は道化師は退場しようかな」
「ちょっと、それどういうことよ!」
「うふふ……その子にはさっきもしたけど、三人とも、近いうちにまた会おう」
カンパネルラは周りに妙な気を発して丁寧にお辞儀をするとそのまま消えてしまった。
「き、消えた…」
「幻術の一種だ。気にする程じゃない。それより早く――」
―おい!本当にこっちに来たのか!?―
―ああ、間違いない!―
「エステル、急いで!」
「う、うん!レイン落とさないでね!」
「もちろん!」
後方から兵士の声が聞こえてくるので、二人は急いで飛行艇へと走った。
船に着くなりヨシュアは手際よくレインを中の長椅子に横たわらせた。
「扉をロックして。そしたらレインが落ちないようにベルトをするんだ。すぐに船を発進させる」
「わ、分かった!」
的確な指示を出して、エステルはそれに従う。一向に目を覚ます気配のないレインにベルトをして、ぎゅっと手を握る。
「何をされたのか分からないけど、絶対に助けるから!頑張ってよね…!!」
顔についていた血と涙はふき取ったものの、服についた血はついたまま。それを見て一瞬悲しい表情を見せるけど、考えを振り切って表情に力を入れて、ヨシュアのいる操縦室へと足を運ぶのであった。