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□敵わない。
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中学を卒業して、俺と黒男は別々の高校に進んだ。
…かといって、全く会わないわけでは無い。
黒男も俺もお互い週に一回は顔を合わせていたし、しょっちゅう一緒に登下校した。

ただ、俺と黒男には少しだけ違うところがあった。

黒男には同じ高校の友人ができた。
今までに見たことも無いほどよく笑う奴らしい。

…俺は今でも黒男以外とは仲良くなんてしたくない。

黒男の口から彼の名前が出るたび、俺は心の中に何かもやもやした物がたまっていく様だった。

そんなある日。
いつものように校門の前で黒男を待っていると、黒男が誰かとともに出てきた。
「あ、間久部…。こいつがゲラ。少しやかましいが割といい奴だぜ。」
なるほど、こいつがゲラかと俺は黒男の隣にたつ背の低い男をみた。

一目見た印象は大したことはない。
背の高さもそうだし、顔だって俺の方がずっと良い。
何より黒男とこんな奴が合うはずもない。
合うはずもないんだ…。

…そう思ってたのに。

ゲラと話している時の黒男は、いつもの無愛想を装いながらもどこか生き生きとしていて…。
それがなんだか負けたようで悔しくて。

それ以来俺は心の奥でゲラを嫌っていた。





そんな中、事件は起こった。
あのゲラが、助かる見込みのない怪我を負った。
事件には黒男も関わっていると聞いたが、そんなことはどうだって良い。
俺は不謹慎ながらも、黒男の前からゲラが消えることを喜んでいた。

これでまた黒男は俺だけをみてくれる。

また、二人きりの世界に戻れる。

また…




黒男の話からゲラの話題は消えなかった。
それどころか前より増えていった。
内容はいつも同じ。
ゲラの怪我に責任を感じているだけ。

ああ、かわいそうな黒男。

ゲラのせいで責任を感じるなんて。

ゲラのせいで。


「俺のせいでゲラは…」
今日も帰り道で同じ話が繰り返される。
毎日一緒に登下校しているのに、話題は仮死状態のゲラの話ばかり。

なあ、俺はゲラに敵ってないのか?

話のたびに俺の頭にはその疑問ばかり浮かぶ。

だから俺はある日言った。
…否、言ってしまった。



「あんな奴死んでしまえばいい。」



もちろんそれを聞いた黒男は激しく怒った。
今思えばこれが初めて見た黒男の怒りだったかもしれない。
でも、これで食い下がる俺じゃない。
俺は、今まで思っていたことをすべてはき出した。

そして気づいた。
俺は黒男のことがこんなにも好きだったんだって。
単にゲラに嫉妬してたんだって。
そしたら急に涙があふれてきて。
敵わないという現実が重くのしかかってきて。
俺はその場に泣き崩れた。

と。
誰かが俺を支えた。
黒男だった。
ごめん、ごめんと謝罪の言葉を吐きながら、黒男もまた泣いていた。

この日から、黒男がゲラの名前を口に出すことは少なくなった。
その代わり、立派な医者になって彼を治すのだという。
それともう一つ変わったことがある。
あのときぼろぼろ泣きながらの恥ずかしい告白をしてから、俺たちはつきあうことを決めた。
男同士…世間的には見放される様なことではあるが、俺たちは見放されるのになれていた。

今日も俺は黒男と、敵わなかったはずの彼の友が治るのを待っている。







後書き
意味不サーセン!!
初書きマクジャ。
なんか前半の間久部ちょい病んでる…www

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