「江流。頼みたい事があるのです」 いつもニコニコしてる江流のお師匠様は、江流だけを呼ぶと俺にも微笑みかける。 大事な話みたいだし席を外そうかな、と廊下に出ていた。 「いい香り……。金木犀?」 ペタペタと香りのほうへ廊下を進むと、昨日ぶつかってしまった僧に会った。 「お、江流の友達!」 「確か……朱泱……さん」 「朱泱でいいよ。おまえさんは何て言うんだ?」 「……」 「名がないのか?」 昨日みたいにヒョイと持ち上げられ、見上げるような朱泱と目が合う。 その一瞬に時間が止まったような錯覚がして、それほどの強い思念を持つ彼を眺めていた。 「……水晶、みたいだな」 「すいしょう?」 「知らないのか?」 |