真夜中に俺の部屋の窓から月を眺め、溜息を吐く栗色。 「俺は……何故こんなにも、生にしがみついているのでしょう……父様……」 その声は消えてしまいそうで、その言葉は他の誰かを呼び続けているように聞こえた。 「……俺じゃ、ダメなのか……」 月が恋をするのも無理はないと思う。 その瞳は月に縋るようでいて真っすぐと、どこか愛おしそうに、見上げているのだから。 「起きてたのか、江流……。明日も早い。早く寝よう」 振り返った栗色に、あぁ、と答えることしかできなかった。 俺の言葉は、無かったことになっているのだから。 瞳を閉じて背中を見せるように寝返りを打てば、小さな手が眠れない俺の髪を撫でる。 母親がいればこんな感じなのだろうと、遠くなる意識の中で思った。 「明日は町に出る……。オマエも、来るよな?」 「いいよ。江流が、そう望むなら」 |