「郷。今日は昔からの友達が訪ねてきます。折角ですから、桜色の浴衣でも着たらどうです?」 「父様……。また私に、お茶を出させるつもりですか……」 「バレました?」 「……私は今帰って来たばかりです。正直言うと、部屋で休みたいのですが……。仕方無いですね――」 スルッと帯を解くと、向こうで父様の話し声が聞こえてきた。 どうもお客様が到着したらしい。 「はぁ……。困ったものだね。父様には」 置かれていた桜色の浴衣に袖を通し、合わせを整え、帯を締めようと背中に手を回す。 「覗きか? 先ずは名を名乗れ。俺は郷だ」 驚きもしなかったソイツを気に留めることなく、何事も無かったかのように帯を結ぶ。 無粋なソイツの顔を拝んでやろうと振り返り、この目を疑った。 ――金色の髪、紫の瞳……。 「オマエ……女……」 |