月光浴


□椿 ―光明ver.―
1ページ/4ページ

雪の中、庭を兎のように跳ね回る君。

それは軽やかで、舞っているようにも見えた。


「郷、此方へいらっしゃい」

父様の後ろに隠れている君は、小さな手で父様の法衣を掴み、恐る恐る私を見上げる薄茶色の瞳。

「……はじめまして。郷と、もうします」

お喋り出来るようになったばかりだというのに、一生懸命に話す言葉は大人と変わらない。

「小さいのにお利口さんだね」

下げたままの頭を撫でると、私を見て貰う。


君の栗色の髪に触れられる事が嘘のよう。

――待ってたよ、郷。ずっとずっと待ってたよ。





次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ