「江流っ。大丈夫ですか?」 「お師匠、様こそ……。野良犬相手に、迂闊に手を伸ばしてはダメだと、仰っていたじゃ、ないですか……」 月光が射し込む一室で、薄桜色の瞳が開く。 硝子のような瞳に目を奪われた刹那がとても長く感じた。 ――蓮の、よう……。 視界に入った俺の手に気付くと、水で冷やした手拭いを額に置いた指が、その頬に触れそうになっている。 「……ッ!?」 自分のしている事が分からないまま、思い出したかのように慌てて席を立った。 「お師匠様、目を覚ましました」 襖で分けられたお師匠様の部屋へ報告に行き、自分の居場所へと下がる前に、もう一度、目をやる布団。 ――俺の……見間違い、か? |