月光浴


□episode 5
5ページ/14ページ

やっとの思いで茂みを抜けると、湖に人影を探していた。

目の前で、月光が水面に反射してキラキラ光る。

目が駄目ならと耳を澄ましても、静かすぎる。

――いない……。

俺の頬をくすぐるような優しい風が水面を撫でていく。

その温かさに、アイツの声を思い出した。

――何で、いないんだよ。

優しく揺れる月光。

その儚げな美しさに、アイツの容姿を思い出す。

――ここの水晶を、見に来たんじゃないのかよ……ッ。

底まで見える透明な水だから、月明かりに照らされた水晶の輝きに、吸い寄せられるように水辺へ歩く。

水に触れようと手を伸ばすと、水面が大きく揺れた。


――触るなと、言うのか。


パシャ……。


次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ