やっとの思いで茂みを抜けると、湖に人影を探していた。 目の前で、月光が水面に反射してキラキラ光る。 目が駄目ならと耳を澄ましても、静かすぎる。 ――いない……。 俺の頬をくすぐるような優しい風が水面を撫でていく。 その温かさに、アイツの声を思い出した。 ――何で、いないんだよ。 優しく揺れる月光。 その儚げな美しさに、アイツの容姿を思い出す。 ――ここの水晶を、見に来たんじゃないのかよ……ッ。 底まで見える透明な水だから、月明かりに照らされた水晶の輝きに、吸い寄せられるように水辺へ歩く。 水に触れようと手を伸ばすと、水面が大きく揺れた。 ――触るなと、言うのか。 パシャ……。 |