無意識に音のしたほうに目をやると、ゆっくりと水面に上がってくる白い衣。 その優雅さは、神の存在を認めてしまいそうなほど神秘的な光景に見えた。 ――湖の精とか? 有り得んな……。 茶化しても感情は乱れたままで、胸が苦しい。 パシャ……パシャ……。 衣に向かい進んでいく俺は、どこかオカシイのかもしれない。 水の中だということも忘れ、呼ばれるように、その場所まで歩いていく。 パシャ……。 胸まで湖に浸かれば、音が鳴るのは俺が進むからではなく、何かが音を立てたからだった。 立ち止まった俺の前で、白い肌が浮かび上がる。 それを引き立てるような薄紅の唇。 ゆっくりと開く、薄桜の瞳。 「……やっぱりオマエか」 |