月光浴


□episode 6
2ページ/21ページ

ふわりと甘い香りが俺を包んでいく。

ソレは金山寺にはない、とても柔らかな、懐かしいような、安心する香りだった。

コイツは何故こんなにも大人びているのだろうと、背中の温かさに、妙に焦り始めている。

同じ歳なのに、と。

昼間は子供を演じ、夜には月を見上げ、必死に己を保つ。

「……もっと、子供でいいのに……。」

オマエの声は俺にすら痛々しすぎるから……自分の心配をよそにコイツの心配ばかりして、バカバカしくて、可笑しかった。




鳥の囀りで目が覚める。

思ったよりも清々しい一日の始まりに瞳を開けると、そこには映るはずの人影がなかった。

その事実に何よりも先に瞳孔が反応し、俺の目は見開いた。

――ッ!!!

どこかの寺から預かっている以上、何かあっては事だ。

次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ