ふわりと甘い香りが俺を包んでいく。 ソレは金山寺にはない、とても柔らかな、懐かしいような、安心する香りだった。 コイツは何故こんなにも大人びているのだろうと、背中の温かさに、妙に焦り始めている。 同じ歳なのに、と。 昼間は子供を演じ、夜には月を見上げ、必死に己を保つ。 「……もっと、子供でいいのに……。」 オマエの声は俺にすら痛々しすぎるから……自分の心配をよそにコイツの心配ばかりして、バカバカしくて、可笑しかった。 鳥の囀りで目が覚める。 思ったよりも清々しい一日の始まりに瞳を開けると、そこには映るはずの人影がなかった。 その事実に何よりも先に瞳孔が反応し、俺の目は見開いた。 ――ッ!!! どこかの寺から預かっている以上、何かあっては事だ。 |