そうやって尤もらしい理由をつけて、アイツが消えてしまいそうな不安な気持ちを誤魔化していた。 慌てて上半身を起こして部屋を見渡すと、廊下から聞こえてきた人の声。 楽しそうに笑うのは栗色だ。 真夜中に聞いた声とは違う子供らしいソレが窓越しに聞こえて、どこかホッとする自分に気づいた。 無駄な事を色々と考えていたら、寝顔を見られた事実にムカムカしはじめる。 コレ以上後れを取るまいと、畳んである浴衣に手を伸ばした。 「まったく……。あのバカ」 帯を結ぶと栗色の足音が聴こえてくる。 俺の身支度が終わるのは、栗色が戸を開けるのと同時だった。 「江流! 今日は忙しいんだろ? 庭を掃いて、廊下拭いてきた!」 「オマエなぁ。……そういうのは俺も起こせよ」 「悪い……。早く目が覚めて、暇だったもんだから、つい。」 「つい、じゃない」 |