寺を出れば、栗色が伸び伸びとしているように見えた。 「今から行く町は、寺での生活で必要な物を買いによく行く、……。オイ……聞いてるか?」 「……わぁ……。凄く綺麗な植物……あ。見慣れない鳥がいるっ! 小さいし、ヘンな飛び方してるっ。あの雲のカタチって龍みたい――」 町の話をしようとすると山道の方が気になるらしく、植物や景色の話にすり替わってしまう。 「オマエは自然が好きなんだな」 俺が皮肉交じりに言ったセリフにすら笑顔で返す栗色は、陽の光のように眩しく見えた。 そんな顔ができるんだから、ずっとしとけばいいのに、と足元を見る。 地面を見ていた俺に気づいたのか、栗色の言った意味を理解するのにそう時間はかからなかった。 「町まで移動してあげたいけど、今日は徒歩だな。」 俺ら二人だけで外に出されるはずはないし、誰かがついてくるはずだ。 ――コイツ。まるでわざと、踊らされているような……。 |