案の定だった。 道ばかり見ていた俺に掛けられた次の一言に、耳だけでなく、すべての感覚を奪われる。 「……ありがと、江流。……俺の為に、してくれてるんだろ?」 顔を上げても、栗色の笑顔はいつもと変わらない。 でも、解る。 心の底から笑う笑顔は、もっと素敵だ。 「……ちょっと心配なんだよ。江流の居場所の、居心地が悪くならないか……。俺にかかわったばっかりに、風当たり悪くないか?」 「ハッキリ言うが。オマエの面倒を見るなんて御免だ。だけど、勝手に体が動いちまうんだから仕方ない。」 「……ヘンな奴だな。お前って。」 「勿体無いと思ったんだよ。オマエ、強いのに」 「……強い、か」 俯いてしまう栗色に、俺の言った意味が正しく伝わってないんじゃないかと思ったが、寺が違う手前、言って良いのか悩んでしまう。 |