金山寺でなら、コイツが次の三蔵法師に選ばれそうなのに、と。 「無駄話は歩きながらにするぞ。他の奴に見つかると面倒臭い」 「りょーかい」 寺に近い山では修行しているだろうから、ケンカを売る奴らに見つかる前に抜けてしまおうと思った。 「来た……。」 栗色はそう言うと、目を細める。 集中している証拠だと分かるのは、コイツの纏う空気が神域に入った時と同じ感覚になるせいだ。 動かない彼は神経を張り巡らせて、細心の注意を払っている。 物音に集中しているんだと瞳を閉じた栗色に気づいて、指先すら動かせなかった。 「なんでかなぁ……。使いたくないんだよ、オ、レ、は――」 「ッ!?」 栗色は茂みから襲いかかる妖怪に眉ひとつ動かさず、風を使い、吹き飛ばす。 |