月光浴


□episode 8
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――見つけた。


その背中を見ただけで、すぐに分かった。

だから、オマエが名乗って、すぐに覚えた。

この体に刻みつけるように。


「郷。夜は恐くなくなったか?」

文脈など考える事も忘れるほど、ずっと、聞きたかった事だった。

ソレを口にしてやっと、この数年の俺の想いが栗色へと届いた気がした。

「おかげさまで」

そう言い放った栗色は、昔より人を寄せつけない冷たさを纏っていた。

俺なんか目にも入らないといった感じで横を通り過ぎられた瞬間、フワリと肌に当たった風は、同じ匂いなのに。

圧倒されて、声が出なかった。

俺なんかよりも、数歩も先を歩く、栗色に……。


月が出て、お師匠様は友と酒を楽しんでいる。

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