「おや。お客様がこんな所に、何の御用ですかな?」 背中から掛けられた声に郷の話をしてもいいのか考えてしまうほど、敵意を感じて振り返った。 「郷という者を探しているのですが。」 「ならば此処で合っていますよ。また中から鍵でも掛けているのでしょう。少々お待ち下さい。今、お開けしますから」 そう言うと衣の何処からともなく鍵を出し、何事もなかったように開けて通り過ぎていく。 戸を引くと、暗い部屋の真ん中で倒れている郷が目に入った。 「おい、オマエっ……」 慌てて抱き上げると、その体は硬くなっている。 あの日と同じように、窓から入る月明かりが雲に遮られ、闇が深くなっていた。 「ドコが大丈夫なんだッ!? バカがっ」 「……来たのか……。来客用の部屋が、準備されていただろう?」 「それよりオマエ。寝るなら布団に――」 |