昔と何も変わっていないじゃないかと床から抱き上げた体に目をやって、はじめて気づいた。 ――何故、コイツが、黒い衣ばかり着るのか。 左腕の切り傷からポタポタと、血が滴り落ちている。 「……この傷、どうした」 「ちょっと避け損ねただけだよ」 初めて会った時も、コイツは怪我を隠していた。 ひょっとして……布団を敷かないのはズボラではなく、本当に疲労困憊していて……傷を隠して、逃げ帰るのが精一杯なんじゃないかと、傷ついた鳥と、鳥かごを見ている気分になっていく。 弱みを見せたくないにも、程があるだろうに。 ――色が、無い筈だ……。 「皆は、知っているのか?」 「……それを聞いてどうする」 栗色の声は想像を超えて冷たかった。 その声に、この寺が特殊だと言っていた事を思い出していた。 |