短編

□羽ばたいて鳥は消える
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何時からだろう、箱庭の雰囲気が変わったのは…
信念と己の誇りを忘れ、一人の最愛を巡って中の良かった友達が争うようになったのは…

大切な物の優先基準が変わった。

皆して一人の人を求める。
自分が友人と話した日どころか、最後に顔を会わせた日すら遠い記憶の様で覚えていない。
守るべき後輩達の笑顔が消え、ギスギスした空気が流れる。
以前のような光景は何処にも見当たらない。

今日はあの子とあの子が涙を流した。
でも誰も気付かない。

恋情に溺れ、卵達の目の前を見失わせた。
正に恋は盲目と言う例えがピッタリ当てはまる。

私の瞳から涙は零れない。当の昔に乾いてしまったから。

カシャンと錠の落ちる音が聞こえた。

胸の錘がストンと取れる。心は幾分か軽やかだ。
鎖が離された手を宙に伸ばして羽ばたく。


鳥籠には羽が一枚。



今日も誰かが泣く。

―――小鳥はもう歌わない―――…




あぁ…本日も無情なほど空は青い…

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