短編

□月姫の約束
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彼女は強くて美しい女性だった―――



何時からだろう。共に支えあうはずの仲間達がお互いを蹴落し合う様になったのは…
何時からだろう。彼女が清らかで美しい、そして悲しみのを流す様になったのは…

学園の空気が変わった…

弱き者を守るはずの人達が役目を忘れては色情に溺れ、導くはずの者達は見て見ぬ振りをする。
気味の悪い位に一人の女を追い掛ける先輩達の姿に顔を歪ませる後輩。
同級の友人や先輩達と最後に顔を会わせたのは何時だっただろうか…
あの温かかった場所はもうどこにも無い。

彼女がほろりと一筋の涙を流した。
後輩には決して弱さを見せない、強くて頼り甲斐のある彼女がである。
彼女から流れた涙はあの天女とは比べ物にならない位に儚くて綺麗だった。

今日も彼等は彼女を苦しめる。

何故誰も気が付か無い。
空から落ちてきた羽衣も持たぬ天女なんて堕天だと言う事に。


彼女は言った。もう後戻りは出来ない、元には戻らないと。


カシャンと錠の落ちる音が聞こえた。

開け放たれた鳥籠に残されたのは一枚の白い羽。
空には軽やかに羽ばたく美しい一羽の白い鳥。



今日も誰かが涙を流す。

―――小鳥はもういない―――…




貴女がいない世界は絶望するほど色褪せて見えます…

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