短編

□シンデレラの魔法は真夜中の12時を過ぎても解けない
1ページ/5ページ



「東雲ゆう、俺様の女になれ。」

「謹んでお断りします。」



周囲の野次馬からは冷やかしや嫉妬が籠もった黄色い悲鳴が飛び舞う。
朝っぱらから人前で堂々と告白をした男子生徒の容姿が主な原因だろう。
高圧的で意味不明な告白を受けた女子生徒にはいい迷惑だ。

そう。女と言う生き物はいつの時代でも色恋沙汰には敏感で好奇心満載である。
今回の物語の舞台となる、金持ちの子息令嬢が通う氷帝学園でも同じだ。





シンデレラの魔法は真夜中の12時を過ぎても解けない





昼休み。冒頭の騒動から二時間が経過した後、話の渦中にいる少女、東雲ゆうは自身の教室で友人達と昼食を取る為の準備をしていた。


チャイムの音と共に騒がきすなる学園。廊下は昼食を取る為に食堂へ向かう生徒達で溢れ、混雑している。
ゆうは自分の机の横にクラスで中の良い友人であり、三つ編みおさげが特徴の真面目っぽい少女”新橋梨花”が机をくっ付けたのを確認する。

家から持参したピンク色の風呂敷に包まる弁当を取り出しながら今朝は大変だったねと労りの言葉を言う。その言葉にゆうは乾いた笑いをするしかない。
朝のホームルーム前に行なわれた嵐の様な騒動はクラスの学級委員長である彼女は勿論の事、学園中に知れ渡ってしまっている。
それもそのはず。朝っぱらから堂々と命令まがいな告白をしてきた人物はこの氷帝学園が誇る一番の大金持ちで生徒会長、尚且つ軽く300人はいるテニス部で部長を務める跡部景吾なのである。その上顔もいいとくると女子が放って置くはずが無い。事実、ファンクラブ等のアホらしい物まである位だ。
そんな人物が大衆の前で大胆に告白とは、空気の読めなさにもほどがある。


今朝の事を思い出し、藤色の布に包まれた弁当をぐったりした様子で鞄から取り出すゆうに梨花は改めて労りの言葉を掛ける。
仲の良い友人に励ましの言葉を掛けてはいるが、若干苦々しい顔をしてるのは気のせいでは無い。それほど強烈な出来事だったのだ。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ