狂い咲いて魅せませう

□月の見える夜
1ページ/2ページ



「いけどん、アタァァアック!!」


いつも通りの夜である。
バレーボールを使い
七松小平太は同じ六年ろ組の中在家長次
六年い組の立花仙蔵と敵を倒す
イメージトレーニングをしている。


「おい、小平太。
真夜中にそんな大声だすな。」


仙蔵は、長次にバレーボールをトス
しながらそう言った。


「……ナイストス。」

長次は、モソリとそういうと
またトスを上げた。


「おぉお!!
仙蔵に長次、いつにもまして
いいトスだなぁ!!!」


小平太は仙蔵の話を聞いていないらしく
先程と同じボリューム…いや
先程よりも大きな声で
いけどんアタックを叫んだ。


すると、長屋の障子があいた。
中からは六年は組の食満留三郎が
寝巻姿で現れた。

「おい、小平太!!
少し静かにしてくれ。」


不機嫌な顔をして少しボサッとした
髪をワシャワシャとさせながら
小平太に注意をした。

仙蔵よりも声が大きいからだろうか。
小平太は留三郎の言葉に気づいた。


「あぁ、悪かったな留三郎。
気をつける!!」


そう言って大きく頷いた。


留三郎は眠かったのか
それだけ言うと部屋に戻ろうとした。


「くさっ!!!!」


だが、留三郎の眠気と部屋に戻る
気力を無くさせる程の臭いが
自分の部屋から漂ってきた。


留三郎と同室の善法寺伊作の仕業である。


「伊作、部屋で煎じるなと何度
言ったらわかるんだ!!!」


「仕方ないだろ?
夢で煎じたら凄くいい薬が
できちゃったから、忘れないうちに
作っておきたいんだ。」


留三郎と伊作の部屋からは
またもやいつもと変わらぬ声が
ギャーギャーと聞こえてくる。


唯一静かに寝付けているのは
六年い組の潮江文次郎だ。

朝から先程まで匍匐前進をしていたから
だろうか。随分とお疲れのようで
ぐっすり眠っている。



そう、これは余りいつもと
変わらぬ夜のこと。


次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ