ジャ忍ズ

□乾杯
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デビュー決定を聞かされた夜のこと


皆が生活する寮の食堂で
お祝いミニパーティーをすることになった。


パーティーではない。
ミニなのだ。


集まったのはメンバーだけ。



机に並べられた食事は食堂のおばちゃんに
作ってもらい、お菓子や飲み物は
自分たちで買ってきたもの。


その飲食物の量はメンバーだけで
食べられるのかと疑う程。


「よし、最初は乾杯だな。」


留三郎がコーラのペットボトルを
持ちながらそう言った。


だが、そんな留三郎に仙蔵が
待てと言い放った。


「何だよ仙蔵。」


「社長からシャンパンを頂いた。
乾杯はそれでいこう。」


冷静に言った仙蔵とは裏腹に
周りのメンバーは目を輝かせていた。


「………シャンペン。」


文次郎が呟くと小平太は騒いだ。


「シャンペーン!!!!
シャンペンだぞ、シャンペン!!
ジュンジュワー!!!シャンペン!!!」


「あっはは、小平太はシャンペンで
騒ぎすぎだよぉ。」


「おい、伊作。
冷静装ってるけどシャンペンを
シャンペンっつっただろ。
お前、言いたかったんだろ。」


「留三郎…
シャンペンをシャンペンって何だよ。
シャンパンをシャンペンだろ。
人のこと言えないくらいに
冷静装ってるなお前。」


文次郎がそう言い留三郎も「うるせー」
としか言いようがなかった。


「………シャンペンシャンペン
うへへへへ。」



長次はといえば、ひそかに笑っている。


皆のテンションの上がりを見て
微笑む仙蔵はシャンペン基シャンパンを
掲げた。


「シャンペンを開けるぞ!!!」


仙蔵も皆に合わせシャンペンと豪語した時
仙蔵の手からシャンペンが消えた。


「こうゆうのって、こうしてから
開けるんだろ?」


シャンペンを取ったのは小平太だ。

小平太はシャンペンを知らないくせに
無駄な知識だけはあり
炭酸の入っているシャンペンは
振ったらコルクが勢いよく飛ぶことを
知っていたのだ。


「お、おい止めろ!!」


仙蔵の言葉を無視した小平太は
勢いよくシャンペンを振った。


そして、コルクは宙を舞った。


シャンペンの雫が宙を駆け巡り
光に反射してキラキラと光る。


天井にドンと音を鳴らして
ぶつかったコルクは伊作の頭目掛け
一直線に落ちて行く。


「いたっ!!!」


伊作が叫んだのは言うまでもない。


「うわぁああ……。」


すると、シャンペンの瓶を片手に
小平太は低く叫んだ。


ドバドバと床に流れるシャンペン。


瓶の中の液体はみるみるうちに
半分になった。


「……まっ、こんなもんか。」


ベタベタになった手を
パンパンと鳴らすと
笑顔で満足そうに小平太はいった。


だが、笑顔なのは小平太だけだ。


後ろから殺気立った気配が凄まじい。


「……止めろと言ったのに
何故やったああああ!!!」


仙蔵は、小平太に叫び

「半分になっちまったじゃねぇか!!」


文次郎はシャンペンを奪い取り叫んだ。


「伊作の頭にコルク刺さってんぞ!!」


留三郎と伊作といえば
二人で頭に刺さったコルクで騒いでいて

長次は薄気味悪く笑っていた。


「……す、すまなかったな。」


殺気だった皆を見て
少し反省したのか、小平太は謝った。


だが、そこまで簡単じゃないのが
デビューしたての六年生なのであった。


ミニパーティーは
まだまだ続く。

夜は長いようで短く
きっと朝まで続くのだろう……。






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