第1章

□第14話 とある日の春風家
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 季節は春。ただし6月半ばにさしかかり。

 今日のように、雨が降ることが多くなりました。


「…………………」

「毛利さん、元気出して下さい。こればかりはどうしようもないですよ」

「……知らぬわ」


 あ、ふてくされた。


 雨が振るという事は、必然的に太陽が隠れるという事であり。

 毛利さんはいつにもまして不機嫌です。


「……涼華、何をぶら下げておる」

「てるてる坊主ですよ」

「てる…?」

「明日良い天気になるように、お願いするんです」


 あまりにも毛利さんが不機嫌で……

 …その怒りの矛先となる長曾我部さんが可哀想だから、作ってみたのだった。



 お天道様、明日だけでも晴れて下さい。

 春風家の兄貴はもうボロボロです…!



「変わった願掛けでござるなー」

 てるてる坊主をツンとつついてそう言ったのは、春風家の最年少少年。



「真田さん、スミマセンわざわざ洗濯物干しなんて手伝っていただいて」

「礼には及びませぬ!むしろ某らが涼華に日頃世話になっている故、当然でござるよ!」


「『当然』だってさ、毛利の旦那」

「…貴様ら三人で事足りるだろう」

「三人いようがいまいが手伝わないでしょ、旦那は」



 飄々とした態度でテキパキと洗濯物を干しているのは、春風家のオカン。



「……涼華ちゃん、今失礼なこと考えなかった?」

「いえいえ。猿飛さんがお母さんみたいだなぁ、なんて全く考えてな――…ごめんなさいぃぃ!!!」


 猿飛さんから殺気立ったものを感じ、いち早く毛利さんの陰に身を隠す。


「あ!ずるくない?毛利の旦那を盾にするなんてさ」

「……他の場所でやれ、涼華、猿……!!!」

「「すみませんでした」」


 地を這うような毛利さんの声に、二人揃って頭を下げる。



 その後、顔を見合わせて笑ったのは言うまでもない。




 彼の風邪が完治したのは、半月ほど前。

 ホッとすると同時に気になっていたのは……。




 これから真田さん達が居候を止めるのか、ということだった。
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