第1章
□プロローグ
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『お前には力があるよ』
そんなわけない、と私は言った。どんくさいし、不器用だし、何かを極めたことすら無い。勉強然り、剣道然り。 そう言うと兄は笑うのだ。
『バーカ、まだまだ子供だなぁ 涼華は』
分からなかった。兄が何を言いたいのか。
『…焦る事は無ぇよ、ゆっくり考えてみろ…な…?』
焦らさないで教えて、と私は言った。でも兄は黙ったままだ。
暫くして、幼い私も悟った。
あぁお兄ちゃんも そうなんだね。
―私を、独りにするんだね…?
紅に染まった世界の中で、私はずっと呆然と兄を見つめていた……。