第1章
□第1話 お尋ね者の風来坊
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「「先生、ありがとうございました!」」
「はい、ご苦労様でした。」
授業を終えて、生徒を送り出す。
私は、華道と茶道をこうやって教えて生活している。今日は千夏ちゃんの所の花を使って、生け花の授業をした。
今は全ての授業を終えて、3時過ぎになっていた。
(帰りにスーパーに寄って行かないと。)
帰り支度を整え、建物を出た。
「…え?本当ですか?」
スーパーの馴染みの女性は、首を縦に振った。
「うん、午後になってから隣街の不審者がこの街に来たらしくてね、商売あがったりだよ、全く…。」
まだ捕まってなかったんだ、例の不審者………………底無しの体力を誉めるべきか、諦めの悪さを責めるべきか…………。
「だから、いつもより人が少ないんですね。」
「そうだよ。まぁ不審者捕獲に興味半分で協力してる住人も、多いらしいけど。」
「えぇ…。」
危険じゃないのかな、それ……警察も、猫の手も借りたい状態なのかな?
「どっちにしろ、早く捕まってもらいたいね。涼華ちゃんも寄り道しないで帰るんだよ?」
「子供じゃないんですから…ありがとうございます。」
手提げ袋に買った物を詰め、帰路についた。
「待て――!!!不審者―――!!!」
「いい加減に捕まれ―――――!!」
……あれか。というか結構近くから聞こえたよ。
向こう側の路地から、多くの叫び声と、地鳴りのような足音が聞こえる。…え?何人で追いかけてるの?コレ。
「…ドンマイですよ、不審者さん…!」
少し不審者に同情してから、歩くことを再開した。
暫く歩くと、今度は後ろから聞こえてきた。ただ、先程のような騒音ではなく、1人駆けているような音だ。