第1章
□第2話 現場検証と探し人
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「今日はちょっと曇り気味だな…。」
朝、昨日とは違い灰色に染まった空を見上げる。
…ここのところ晴れ続きだったし、仕方無いか。
『よしっ』と掛け声を掛けてから、台所に向かう。今日は昨日までと違い、多目に朝食を作らないといけない。
「今は、独り暮らしじゃないからねっ。」
「おはよっ!お涼ちゃんっ!!」
調理しながら振り返ると、前田さんが戸にもたれながら、こちらに笑い掛けていた。
「前田さん、おはようございます。随分と早いですね。」
今は朝の5時半過ぎだからそう言うと、キョトンと目を丸くされた。
「これが普通なんだけどな…。」
…そうだった、普通の居候じゃないんだった。昔の人は、日が昇ると同時に起きるんだっけ。
気付くと、隣まで彼は来ていて、すでに出来ている料理を見渡していた。
「おぉ――――!凄ぇ旨そう!…本当にゴメンな、何から何まで…。」
「気になさらないで下さい。料理は好きですし……あ、もう少しで完成するので先に居間に行ってて下さい。」
「…いやっ、俺も手伝う!あっ、そうだ運ぶのは任せてくれって!」
こういうところも昔の人譲りなのだろうか、彼は物凄く紳士的な方だった。
「ん〜昨日も食ったけどさ、本当に料理上手いよ!」
焼き魚を頬張りながら、彼は言った。行儀悪いが、そう言われるのは、冥利に尽きるというものだ。
「ありがとうございます。前田さん。」
そう言うと、何故か渋い顔をされた。……え?
「…ずっと気になってたんだけどさ………………そこまで堅苦しくされんのは、苦手なんだよな……敬語は止めてくれないかい?」
………えぇぇぇ?
「前田さんはお客さまみたいなものですし…無理ですよ?」
「え―…。」
気象予報を見ておこうと、テレビに手を伸ばし……………違和感を感じて、後ろを見ると前田さんが固まっていた。
「…点けていいでしょうか…?」
「…へ、あ―、うん、大丈夫大丈夫、いいよっ!」
昨日何とか説得したので、武器は自室に置いてもらっていたが………まだ、テレビには慣れていないようだった。
点けるとまず映ったのは、インタビューされているだろう、少し老けた男性だった。
『――こちらは先日話を聞かせて頂いた、K農業に勤務されている21歳男性です―――』
「あ、俺と同じ歳だ。」
「私と同い年……。」
「「………。」」