第1章
□第3話 オクラin動物園
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「……。」
『彼』は街を歩いていた。その異質な格好は確かに目を見張るものだが、それよりも、萎縮させられる程の威圧感は何にも形容し難い。
近寄りがたい態度。
冷ややかな瞳。
隠そうともしない殺気。
「…何も分からぬ、な。」
森を抜けたのは良かったが、どんなに見渡せど厳島どころか、此処が一体何処なのか検討もつかない。
そんな中、突き当たりに大きな壁が現れた。
「……。」
何やら面妖な格好をした童子やら、男女関係なく、多種多様の年齢層の者たちが、門と思われる場所から出入りしている。
その近くにいくと、看板のような板が頭上に掲げられていた。…ただ、初めの『花』という文字以外読めはしなかった。
「お涼ちゃん!!早く早く!!」
その数時間後。
涼華と慶次は、夢吉を救出するべく(?)花阪動物園に向かっていた。
「ちょっ、慶次君!改札は切符を入れて通ってください!!」
「あ、そうか。それにしてもお涼ちゃんは変わった切符だな?」
「電子端末ですから。」
「??」
冒頭のムードはどこへやら、二人は騒ぎながら目的地を目指していた。
「そこまで急がなくても、ちゃんと保護されてますから大丈夫ですって!」
「でもやっぱり心配だからさ―……よし、こうしよう!!」
「え?わあっ!!?」
慶次は涼華を軽々背負って、走り出した。
「け、慶次君―!?」
「道案内してくれよ、この方が速いから!!」
「えぇっ!?待っ……………ひゃ――――!!?」
確かに速いが……速すぎて目が回る…っ!!
半分叫びながら、彼女は何とか道案内をした。