第1章
□プロローグ
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「涼華、おはよ――!」
「おはよう、千夏ちゃん」
その頃、涼華は街まで下りて、花屋に来ていた。
「ハイ!頼まれてた花、こっちにとってあるから。」
「ありがとう!」
私は花の種類を確かめる。…うん、全部揃ってる。
すると背後から千夏ちゃんの声が聞こえた。
「…いや―やっぱり似合ってるね。」
「…?何が…?」
「その着物」
彼女の方を見ると、私の着ている振り袖を示された。
職業柄、私は一般の人と比べて着物を着ることが多い。
仕事が無いときも結構着物でいたりするので、時折、千夏ちゃんに『最新のデザインも知らないと乗り遅れちゃうよ!!』と言われて(強制的に)デパートに連れていかれたりした。
…いや、現在進行形で時折連れていかれたりする。
彼女の名前は、源 千夏(ちなつ)。花屋で働いている明るい親友だ。
多少、男勝りな面もあるけど、この活発さにどれほど助けられてきたか……。
「千夏ちゃんも着たらとても似合うと思うけど。」
「いやいや、大和撫子の涼華だからこそ、でしょ!」
「大和撫子って…大袈裟過ぎるよ。」
「いやこれ周知の事実だから………あ、そういえばさ」
彼女は急に顔色を変えた。
「噂聞いてる?……涼華は山の上に住んでるから聞きようがないか。」
「噂?」
「隣街に危険な輩が出たんだって!」