第1章

□第1話 お尋ね者の風来坊
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「…らが………。」

「!どうしたんですか!?何処か具合でも………。」

「はらが…………減った…………。」

「…え。」








「簡単な物しかありませんが…。」

 その場ですぐ食べられる物を買っていなかったので、とりあえず帰宅して、料理を出すことにした。
 …ん?家じゃなくて交番に連れて行くべきだったかな?アレ?


 まぁ過ぎた事は仕方無いので、居間の彼の前の机に食事を置いた。

「どうぞ召し上がって下さい。」

 当の彼は、食事を物欲しそうに見つめていたが、中々手をつけようとしない。

「…もしかして苦手な物がありましたか?」

「いやいや!!…本当に、もらっていいのかい?俺、まだ何も話してない……怪しい奴なのに。」

 …気にしてたんだ。思ったより常識人の不審者さんで良かった。…あれ、私の方が変なのかしら、コレ。

「…ん〜……とりあえず、空腹のままではつらいでしょうから、話は後でゆっくり聞きます。」

「…もし怪しいことをしたら…?」

「電話して、友人を呼びます。」

 呼ぶのは、近所の道場主の方だ。私が知る中で1位2位を争う強者である。

「……お嬢さん。」

「…はい…?」






「『でんわ』って…………………何だい?」






 ……。



 …………。



 ………………え?





 前言撤回します。
 不審者さんは、とんでもない『非』常識人でした。








「…おい、いざなぎ。」

「ん、あまてらす、お帰り〜」

「こんの緊急事態に『でぃーえす』してんじゃねぇぇ――――!!!」

「ぎゃあぁぁぁ!!僕の電気ネズミがぁぁぁ――――――!!」

「世界の安定より、携帯獣育ての方が大事か!?」

「当たり前だよ!だいごさん強いんだよ!?」

「即答すんな!!」

「…冗談だって★あまてらすに報告することがあるから、待ってただけ!」

「…報告?」

 いざなぎは懐から、紙をペラリと出した。
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