第1章
□第2話 現場検証と探し人
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「……え!?お涼ちゃんって21!?」
先に口を開いたのは、前田さんだった。
「は、はい、まぁ…前田さんも21歳だったんですか……。」
物凄くしっかりしてるし、もっと年上だとばかり思ってた…。
彼は不意にニッと笑った。
「じゃあ敬語止めてくれる、よな?お涼ちゃん!」
「そ、そう来ましたか…もう慣れてしまったので無理ですって…!」
「お涼ちゃんっ!!」
「無理ですっ!」
「んー…じゃあ、名前だけでも!この通りっ!!」
パンッと両手を合わせて懇願され、言葉に詰まる。
「……慶次、さん?」
「もう一声っ!!」
「慶次!…………………………………………………………………………君。」
「……まぁいっか、それで!改めてヨロシク、お涼ちゃん!!」
「はい!……おかわりよそいましょうか慶次君?」
「あ、悪ぃねえ―。」
私からすれば、あの『お涼ちゃん』という呼び名をどうにかしてほしいけど……彼の人懐っこい笑顔に全て丸め込まれてしまう気がしたので、黙って箸を進めることにした。
食後…。
「…友達を?」
彼が開口一番に言ったのは『昨日はぐれた友達を探したい』という事だった。
とても心配しているのが良く分かる。未知の世界なのだ、それが当然だろう。
二人になれば、不安も多少緩和することが出来るだろう。なるべく早く見つけてあげたい。
「とりあえず、その人の特徴を教えてくださ――」
「いや…人じゃなくて…………猿、なんだ。」
「…へ!?猿、なんですか!!?てっきり人間だとばかり……!!」
「あぁ、子猿なんだけど……名前は『夢吉』ってんだ。」
この世界に来たときは確かにいたが、人々に追いかけられる内にいつの間にか姿がみえなくなったのだという。
「てっきり肩にいると思ってたんだけど…。」
「いないことに気付いたのは何時ですか?」
「この町に来てから、だったな―。」
少し考えてから、立ち上がった。
「ちょっと待っててください、すぐに戻りますので…。」
「ん?何処に?」
「知り合いの道場に…………家をあけますけど、絶対に出ないで下さいね?絶対ですよっ!?」
「お、おう…って童子みたいに言うなって!!」
苦笑いしている慶次君を残して、小走りに家を出た。