第1章
□第2話 現場検証と探し人
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街中に構える大きな道場……『飛鳥道場』に来た私は、鍛練場に向かっていた。
今の時間なら、あの人はそこにいるはず。
「…涼華さん?」
思った通り、彼は胴着姿で竹刀を振っていた。
いきなり来た私を見て、驚いた様子だった。
「秋真さん、おはようございます。すみません、こんな早い時間に……。」
「僕は構わないけど…何かあったの?」
「え―と…………服を貸してもらいたいな―…って思いまして…。」
「……………え?」
…まぁ、その反応は正しいだろう……。女の私が男の人の服なんて着ないし…大体、秋真さんとは体格差がありすぎる。
「……涼華さん、生徒にでも貸すの?」
「いえ、居候の方に。」
「いそ…居候ぉだぁ!?」
…あ、しまった。
道場主の彼は優しい…優しいのだが……私に対しては、かなり過保護なのだ。
「…あ、あの、親戚の方ですよ、従兄弟の…。」
「君にそういう親戚がいないのは良く知ってる。」
「うっ。」
…しかも付き合いが長い1人だから、嘘はつけない………。
「まさか脅されたのか!?…今すぐ絞める…!!!」
まずいっ!!慶次君が殺られるっ!!
「待っ――話を聞いてくださいっ!!ちゃんと理由があるんですよ!!」
「理由っ!?………………どんな?」
「え、えっと今はちょっと……でもっ!怪しいことは全く無いです!秋真さんと、千夏ちゃんと、冬樹さんに誓って!!!」
…昨日話題だった不審者がワケアリで元の世界に戻るまで泊めてる………なんて言ったらどうなるか。
『変なことを涼華さんに吹き込むんじゃねぇ!!』とか言って、慶次君が問答無用で殺られるかもしれない。
…いや、そもそも『異世界から来た』なんて信じてもらえないかもしれない。
「………分かった。」
「!」
「但し、何か危ないことがあったら絶対に言いな?分かった?」
「はい!ありがとうございますっ!!」
渋々だけど了承してもらい、私は心中で何度も彼に頭を下げた。
ごめんなさい、秋真さん…話はまた今度、包み隠さず教えます…!