第1章
□第2話 現場検証と探し人
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「…という訳で、これが此処の『洋服』という着物です。」
帰宅して、慶次君の前に借り物の服を1セット差し出した。
「あ―、あの変わった服…今お涼ちゃんが着てるのもかい?」
コクンと頷く。今日は着物ではなく、薄い長袖にカーディガン、ジーンズといった洋服を身に付けていた。
「本日は仕事が無いので。慶次君も今日はこれを着てください。」
「え、俺も?この格好じゃ――」
「ダメです!今日、というか此方の世界では、その派手な着物は止めてください!!――…まぁ、不審者扱いされても構わないなら――」
「分かった!!着る!!」
…不審者扱いされたことは、よほどのトラウマのようだ。
意気込んだはいいものの、やはり着方が分からなかったようで…教えるのに苦労した。
そして午前9時、街へ出掛けた。
目的は、慶次君が生活するに当たって必要な物品を買い揃えること。
更に『夢吉』を探し出すことだ。
「はい、4360円です。」
「あの少し聞きたいことが…。」
スーパーで代金を支払いながら、店員に話し掛けた。私の後ろから、洋服姿の慶次君が顔を出す。
「昨日か今日、子猿を見なかったかい?紅白の飾りをつけたヤツなんだけど…。」
店員はポーッと彼を見詰めた後、ハッとして言った。
「い、いえ…見ていませんね…。」
「…そっか、ありがとなっ!!次行こう お涼ちゃん!」
そういいながら、ひょい、とエコバッグを私の手からかっさらい、自動ドアを警戒しながら(来たときは、驚きのあまりにズザザザッ、と距離をとっていた…)店を出る。
外へ出てから、さっきの店員さんを思い出す。
「…モテますね、慶次君は……。」
「俺が?」
確かにここまで整った顔をしているし、無理もないだろう。
すると『そういえば』と言って彼は目線を寄越した。
「お涼ちゃんは、誰かイイ人いるのかい?」
「それは…恋人とかいうことですか?」
いきなり変わった話題に面食らいながら、答えた。
「そうそう!恋はいいよ―…あ、今朝会ってた人はどうだい?」
まさかの秋真さん!?
「秋真さんは違いますよ?ただの親友…兄のような人ですし……怒ると恐いし………隙ありっ!」
「うおっ!?何すんだい!!?」
彼が持ってくれている袋を狙ったが、見事にかわされてしまった。
「だからさっきも言ったろう?俺は鍛えてるし、この位大丈夫だって!」
「…むー。」
いくら男の人だからといって、大量の荷物を全て持たれては心苦しい。
虎視眈々と袋を狙いながら、並んで歩いていく。