第1章
□第2話 現場検証と探し人
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「大体、千夏ちゃんっていう親友が、秋真さんの事が大好きなんですよ、えいっ!」
「おっと!へぇーそうなのかい?春だね――。」
「でもなかなか成就しないんですよ……それっ!」
「そらよっ、と!喧嘩も恋も押しの一手だからな!ちょっくら押しが甘いのかもしれないぜ?」
「ふーむ、成る程……………って危ないっ!!!」
「!!?」
赤信号の横断歩道を渡ろうとした彼を引き戻した。
…び、びっくりした…もう少しで轢かれてたよ。
「昨日も見たけど、スゲーな!鉄の塊が走ってる!」
「…いやいやいや、もっと緊張感を持って下さいって!!」
これは、キツく言い聞かせておかないと…。
「この横断歩道を渡るときは、あの光が青色になったときだけですよ!!」
「もし、赤いときに渡っちまったら?」
「あれを見てて下さい。」
私が示した缶は、右折してきたトラックによって…
…パキッ
………まっ平らに踏み潰された。
「――き、気を付けるよ………。」
真っ青な顔で、彼は頷いた。…大袈裟に言い過ぎたかな?まぁ、命は大切だからね。
「では行きましょうか。」
私の手には、さっきの過程で奪い返した袋が2つ。
「あ!いつの間に!?」
今度は、慶次君からの袋を狙う手を避けながら、街中の人々に夢吉のことを聞いて回った。
「手掛かり0、か…。」
街の隅々まで探し歩いたが、それらしい情報は全く掴めず……一旦帰宅して、情報整理をすることにした。
「町に来てないってことは……山の中にでもいるのかもしれないな―…。」
彼のいう通り、此処等一帯は自然が多いので、十分にあり得る。
ただそれだと、見つけるのはほぼ不可能だ。
「……もしかしたら、この街に来る前に…慶次君が初めて不審者呼ばわりされた隣街で、はぐれてしまったのかも……。」
「…不審者っていうのよしてくれよ……。」
「あ、スミマセン。」
「…でも、確かにその可能性はあるな……それに、俺がこの世界に初めて来ちまった所も調べたいし。…元の世界に戻る方法が見つかるかもしれない。」
「現場検証ですね…まだ午後0時過ぎ…あ、午の刻で時間もありますし、行ってみましょうか!」
慶次君は今まで一日二食だったらしいので私だけ簡単に食べてから、隣街に向かった。
…時間短縮の為に乗った電車に対し、彼が自動ドアのとき以上に狼狽えていて、周りの視線が凄かったのを除けば、平穏無事にたどり着けたと思う……。