第1章

□第3話 オクラin動物園
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 …この動物園、国内でも結構大きいんだった。
 入ったものの、当然慶次君は見付からず……溜め息を溢す。

「多分、管理室を探しに行ったんだろうけど…。」

 建物は其処らにあるし………あ、地図を見ればいい話だよね。
 …で、地図は何処にあるんだろう。





 トボトボと歩く中で、視界に『モルモット小屋』の文字が入ってきた。
 …モルモット…見たいな……。

 それどころでは無いが、ついついフラッと屈み込んでしまった。



「わぁ…。」

 様々な色のモルモットが、柵の中にワラワラといた。

「可愛い…。」

「…ただの毛の塊だろう。」

「そんなことないですよ。目がクリクリしてますし。」

「…解せんな。」

「私は大好きですけど……………………ん?」



 やっと違和感に気が付いて、顔を見上げた。
 少し離れたところに、1人の男性がいた。



 細身に緑色中心の…鎧兜を纏ったその人は、切れ長の瞳で此方を見ていた。


 とりあえず微笑んで会釈すると、端正な顔立ちが驚きに染まった。

「…恐れぬのか?」

「はい?いや、モルモットはそこまで獰猛な動物では無いですし…。」

「…そうではない。」

 首を傾げると、これ見よがしに溜め息をつかれた。そして――。




 ――ヒュッ




「……!?」

 首元に、一瞬の内に何かを突き付けられていた。これは………。





 …え?フラフープ?

 フラフープなんて見たのはいつ以来だろうか。
 …まさか、いい年した男性が持ち歩いているなんて思いもしなかった。

 あ!最近の流行りだったりして?



「……女。」

「あ、はい。」

「…何故 動じぬ?」

「はい?」

 そんな真面目に聞かれましても……だってフラフープですし。
 くるくる回す遊具ですし。


「いえ、あの……恐くはないですよ?」

 確かにこの人は、何となく普通じゃない。
 私の居候も変わってるけど、それとはまた違う。

 少しピリピリした空気を纏っている。



 …でも、今まで生きてきた中で見たことがある『恐ろしさ』には及ばない、と思った。



 眉を寄せながら、またその人は口を開いた――いや、開こうとした。
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