第1章

□第3話 オクラin動物園
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「――!」

 緑色の人がバッとその場を離れる。



 …ビュオッ!



 その直後、私の前に荒々しい突風が吹いた。

「――桜?」

 風に、多くの桜の花びらが舞っていた。
 今は5月の中旬だ。この辺りの桜はもう青葉になっているはずだけど…。

「お涼ちゃん!!」

「え…慶次君?」


 今まで探していた人物が、何故か私を庇うように立った。

「大丈夫かい!どこか怪我してない!?」

「はい!?何でそうなるんです!?大体勝手に園内に侵入するなんて駄目じゃないですか!!」

「キキッ」

「!」

 彼の肩を見ると、子猿が乗っていた。見付けられたんだ、夢吉。…実際に見ると凄い可愛い……。

 慶次君は『それどころじゃない』と、フラフープを構えている先程の人に向かい合った。その手には、太めのパイプが………ど、何故から持ってきたんだろう…。



「まっさか此処でアンタに会うとはな!元就!!」

「…貴様は…前田の風来坊か…。」





 ……え?知り合い?

「俺も今のアンタみたいに、此処に来ちまったときは不審者扱いされてさ、滅茶苦茶大変だったよ。」

「我の何処が不審だというのだ。」



 あ…そうじゃないかと思ってたけど…やっぱりあの人が閉園の原因なんだ…。




「いや、格好がさ………それより元就、女に刀を向けるなんて男としてどうなんだよ?」

「刀?刀じゃなくてフラフープ……」

 あれ、何で慶次君怒ってるんですか?

「貴様に指図される筋合いはない。我はその女と話していただけよ。」

 え?何で否定しないんですか!?え!?


 二人の間に、緊張感がはしる。





「――ここはちょっくら、喧嘩と洒落込みてえ気分だねぇ!」

「フン…そんななまくらで我に勝てる筈もない。」


 ……ええぇぇぇ!?
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