第1章
□第10話 鬼の目にも笑顔
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「皆さん、大丈夫ですか―?」
先程から大騒ぎしている四人がいる居間の方に来ると……。
予想通りというか何というか。
真田さんが、テレビドラマのワンシーンに過剰反応していた……。
「涼華殿――!!!」
「わたぁぁっ!?」
声を掛けた瞬間、赤い弾丸がこれまた凄まじい勢いで衝突してきた。
その勢いのまま、真田さんは叫んだ。
「涼華殿っ!あの箱は破廉恥でござるよ!!ま、まままさかいきなりあのような絵が出てくるとは、夢にも思わず……」
「絵というか映像ですけど…」
あまりの衝撃を受けたのか半泣き状態の彼をよしよしと撫でながら、後ろで知らん顔をしている方のほうを見た。
「毛利さん、いくら何でも叩いたりしたら駄目ですよ」
相手は子供だし。
史上最強の純情少年だし。
「……フン」
毛利さんは拗ねたようにツーンとそっぽを向いた。
な、何か一瞬あの毛利さんが子供っぽく見えたような……。
……真田さんにしているようなことしたら確実に鉄拳が飛んでくるだろうけども!
その場面を想像して身震いすると、代わって長曾我部さんが声を発した。
「何で毛利が真田を殴った、って知ってんだ?」
「…スミマセン、皆さんの会話ならば遠く離れていても聞こえるかと……」
かなり大声だったしね。
ここが山奥じゃなくて街中だったら、近所迷惑で抗議が殺到したハズだ……。
「猿飛さんの部屋まで、はっっっきりと響いてましたから」
ガバッ!
「佐助!!!」
「わぁ!?」
真田さんは『猿飛さん』の言葉に反応したのか、いきなり顔を上げた。
すっかりテレビの衝撃も引いたようだけど、今度はかなり不安そうな表情をしている。
「涼華殿、佐助の容態はいかがな様子で…?」
「先程目を覚まされましたよ」
「誠でござるか!?」
途端に、彼の顔はパアッと明るくなった。
数時間前までろくに話していなかったが…やはり心配だったようだ。