第1章
□第5話 迷子の純情少年
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会議から2日が経った。
あれから、皆で協力して手掛かり集めに奔走したけれど、それらしきものは全く掴めなかった。
毛利さんが初めに居たという山にも行ってはみたが、公園のときのように何かが見付かる事もなく……今日に至る。
「お待たせしました!」
「待ってましたっ!!」
お盆に朝食を乗せ、居間の方に声を掛けると、慶次君がそれを受け取りにきた。
持ってから『ん?』と盆の上の食事を凝視する。
…やっぱり見慣れないからそうしたくもなるよね。
「お涼ちゃん、今日の朝食…何?」
「スパゲッティです。」
「すぱ…?」
「外国――南蛮の料理、ですね。」
厳密に言えば、南蛮生まれじゃないと思うけど……彼等にとっては外国はみな『南蛮』らしいので、それで通した。
へぇ―、と彼はカルボナーラを観察しながら運ぶ。
「毛利さ―ん、朝餉の用意が出来ましたよ――。」
縁側に顔を出すと、日光浴中の毛利さんが振り向く。
「…何だこの白いものは……。」
「すぱげってい、っていう南蛮料理だってさ。」
「あ!待って下さい慶次君!これは、こうやって巻いて一口ずつ食べるんです!」
「うぉっ成る程な!!」
「………(モグモグ)」
「二人共、食べ方綺麗ですね。…さすが武将。」
「そうかな―…って旨いな、コレ!!」
騒がしい食事。
一人ぼっちだったのが、もう遥か昔のことのように感じる。実際、居候ができて、まだ4日しか経っていないのだが……。
朝起きると、慶次君が笑っていて、毛利さんがじっとお日様を観察(…いや、崇拝か、あそこまで毎日するなら)している………。
それが当たり前のようになっていた。
…ただ、今日はこれまでとは違うのだ。
「実は本日より、私はまた仕事に行かなければいけないんですよ。」
ここ数日は講座が無く、彼等とずっと行動を共に出来たが、今日はいくつか授業が入っている。
「華道に茶道の師、って言ってたやつだろ?頑張りなよ!!」
「……何を辛気臭い面構えをしておるのだ。不満でもあるのか?」
…鋭いっ!
不満というよりは心配、かとは思うけど……。
「…お二方を残していくのが心配でして………その………色んな意味で…。」