第1章
□第8話 迷彩さんの意地
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「…私を訪ねに?」
電話にでると、仲良しの受付スタッフの方からだった。
『うん、春風の名前は知らなかったらしいけど、お前に会いたがってた。』
昨日の夕方頃…丁度留守にしていた時間に、その人が和風館に来たらしい。
「名前を知らないってことは…生徒ではないでしょうねえ……。」
『何も心当たりが無いなら俺から今日、断っておくけど?』
「…何で既に、会うのを断る段階の話なんですか?」
『だってな…………………………もしお前に何かあれば、送り出した俺が、秋真の奴に半殺しにされるから……………。』
「………あぁ…そうでした……。」
だが頭ごなしに面会拒否、というのは流石に無礼すぎるだろう。
秋真さんも遠征でいないし、問題ない!
「取り敢えず、どんな方でした?名前は…」
『名前は言わなかったな……でも結構目立つ外見してたよ』
「外見?」
『顔にフェイスペイントをしてて、迷彩柄のポンチョを着てた。』
フェイスペイントに………迷彩ポンチョ?
それってこの前の…。
「あの、その人の他にもう一人居ませんでしたか?」
『もう一人?』
「長髪で高校生位の少年とか…」
『随分と具体的だな…俺が会ったのはさっき言った奴だけだぞ。』
あれ、一人?
この前会った二人の内、赤い少年を迎えに来たお母さ―――…いや、青年だとは検討ついたけど……。
『どうだ?知り合いじゃなかったら断――』
「…どれだけ断りたいんですか。大丈夫です、この前知り合った方ですので」
『…マジ?』
「マジです。」
何にせよ、今日は和風館に持っていかなければならない資料があるので丁度良い。
提出ついでに彼と合流しよう。
確認を済ませ受話器を置くと、電話を興味深そうに見詰める長曾我部さんが近くにいたのに気付いた。
「電話、って言うんですよ。遠くにいる方ともこれを通せば会話できるんです」
「凄ぇな!!とんでもねぇ世界に来ちまったもんだ…!!」
BASARAの兄貴分は、キラキラと子供のように瞳を輝かせた。