NOVEL
□一時の闇に潜む真
1ページ/5ページ
―此処は…?
何も見えない暗闇。見渡すかぎり光一つない。
漆黒の中に独り、行き場もわからず立ちすくんでいた。
闇には慣れている。…慣れているはずなのに。
―何故、動けない?
声に出してみるが、聞こえない。
呼吸のように空気に溶け込み耳には伝わらない。
息が苦しい。唇が乾燥している。暗闇に惑わされ頭が痛くなる。唾を飲み込んでみる。
―落ち着いて状況を…。
再び辺りを見渡す。
この闇はどこまで深く重いものなのだろう。
俺が動けなくなるほど、頭を抱えたくなるほど…濃い闇なのか。
分からない。
誰に問い掛けたいとも思わないのに、疑問ばかりが渦巻く。
ダメだ。このままでは闇に飲み込まれてしまう。
飲み込まれて…戻れなくなる。
―戻れなく?…何をいってるんだ。俺に帰る場所なんて…。
『…ミ…ネズミ。ネズミ』
―コレは…
『ネズミ。』
―紫苑?―
―一時の闇に潜む真―